有賀歯科医院 ニュースレター No.16

連日厳しい暑さが続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
有賀歯科医院に来院されているみなさんに、ニュースレターを通じて、より健康への関心が高まり、良い刺激となれば嬉しいかぎりです。
今後も頑張って作っていきますので、是非楽しみにしていてください。

いろいろな持病の治療のために、お薬を服用している方も多いと思います。
お口とからだの病気との間には大きな関係があります。
お口の病気が全身の健康に影響する一方で、いくつかの持病の治療薬が歯科の治療に影響を与えることがあるのです。
今回はその中でも骨粗鬆症治療に使われる「ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)」について、歯科治療に与える影響をご紹介します。

1.骨粗鬆症とは

骨量の減少と骨組織の構造の異常の結果、骨がもろくなって骨折しやすくなる病気です。
骨は古い骨の吸収新しい骨の形成を繰り返していますが、骨の吸収骨の形成を上回ると、骨密度が減少して骨の中がスカスカになってしまいます。
骨質と骨密度の低下により骨折しやすくなると言われていて、股関節や手首などの骨折が起こりやすくなります。

原発性骨粗鬆症 (原因となる病気がない骨粗鬆症で、全体の90%)

●加齢によるもの
骨密度は50歳くらいから急激に低下します。腸からのカルシウムの吸収が悪くなることも原因のひとつと言われています。

●更年期、閉経後骨粗鬆症
女性ホルモンのひとつであるエストロゲンは、骨吸収をゆるやかにする働きを
持っています。エストロゲンの分泌が減少することで、骨吸収が進みやすくなります。
閉経後10年を過ぎた頃に20~27.5%の骨量が減少すると言われています。

●ダイエット
体内のカルシウムの99%は骨に蓄えられ、残り1%は血液や組織に含まれていて、いろいろな臓器を動かしています。
無理なダイエットでカルシウムが不足すると、常に骨からカルシウムを補充しなければならなくなって、骨量が減少することがあります。

続発性骨粗鬆症 (内分泌疾患や代謝に関係あるものなど)

●生活習慣関連骨粗鬆症
糖尿病、慢性腎臓炎など

●薬物性骨粗鬆症
特にステロイドによるものに注意が必要

2.ビスフォスフォネート製剤(BP製剤)

骨粗鬆症の治療には、活性型ビタミンD3製剤(カルシウムの腸管からの吸収を増す)ビタミンK製剤(骨形成を促す)・女性ホルモン製剤・ビスフォスフォネート製剤などの薬が主に使用されます。

このうち特にビスフォスフォネート製剤(BP製剤) の服用をしている方は、歯科治療を受ける際に注意が必要です。

海のイメージ

このようなお薬を飲んでいませんか?

骨粗鬆症の予防治療に処方される代表的な薬の例です。

骨粗鬆症の予防治療に処方される代表的な薬

BP製剤には、注射薬と内服薬(飲み薬)があり

・骨粗鬆症
・悪性腫瘍骨転移(乳がん、肺がんなど)
・多発性骨髄腫
・骨ページェット病
・副甲状腺機能亢進症
・ステロイド性骨症

などの治療に幅広く使用されています。

からだの中ではたえず古い骨は壊され(骨吸収)、新しい骨が作られています(骨形成)。
歯の周りにある歯槽骨でも同じことが行われています。

BP製剤は骨吸収を行う破骨細胞の働きを抑える薬剤で、骨が吸収されることを抑えます。

3.ビスフォスフォネート系薬剤関連顎骨壊死

幅広く応用されているBP製剤ですが、継続的に使用していると、抜歯などの傷がきっかけで顎の骨が壊死するという副作用が起きることがあることが分かっています。

発症頻度は骨粗鬆症の内服薬の場合0.04%に、注射用製剤の場合は0.4~40%が発症すると報告されています。また、注射用製剤の方が顎骨壊死の症状が大きく、予後も悪いとされています。

発症頻度はそれほど高いものではありませんが、ひとたび起きると治りにくく、発症する前に予防することが望ましいです。
また、発症した時必ずしも痛みや腫れなどの症状が起こるわけではないことも発見を遅らせる原因となっていますので注意が必要です。

骨粗鬆症患者さんに発症した顎骨壊死の症例

骨粗鬆症患者さんに発症した顎骨壊死の症例

乳がんの骨転移によりBP製剤の投与を受けている方の顎骨壊死の症例

乳がんの骨転移によりBP製剤の投与を受けている方の顎骨壊死の症例

4.ビスフォスフォネート系薬剤関連顎骨壊死を発症させないために

BP製剤による骨壊死は、顎の骨にしか起こらないことが分かっています。
さらにBP製剤には、口腔内細菌感染を促進する可能性があることも報告されています。

よって口腔衛生の徹底により口腔内細菌数を減らしておけば、発症をある程度予防することができます。

BP製剤による治療を始める前に、
定期検診によるメインテナンスを継続的に受けて、口腔内の管理をきちんとしておきましょう!

「現在のBP製剤内服状況」「将来内服する可能性」をお知らせください

初診時問診票に服用しているお薬を記載していただく他、問診時に服用期間などをお聞きすることがあります。
また、ご来院の間隔があいた場合、新しく服用し始めたお薬がないか確認するために再度問診票を記入していただいたり、お薬手帳を拝見させていただくこともあります。

BP製剤は骨粗鬆症の予防のために、50歳くらいから服用をすすめられている方も多いですので、服用している場合は薬剤名を先生かスタッフにお知らせください。

安全に歯科治療を受けていただくために、ぜひご協力ください。

当院の問診票(再診時)の一部

当院の問診票(再診時)の一部

抜歯などの外科処置にあたっての休薬について

抜歯などの外科治療が必要な場合は、医科の治療医と連携をとって歯科治療の準備のための休薬を行います。

休薬するとBP製剤の影響が減ってきますので外科治療に適した状態になります。
(※投与期間が3年未満で、他に病気などの問題がない場合は原則的に休薬は不要です)

ただ、がんの転移を防ぐためにBP製剤の投与を受けている患者さんにとっては、休薬は望ましくないことが多く、外科処置の治療を優先することが多いです。

患者さんによって状況は異なりますので、服用期間や外科処置の必要性を踏まえて判断する必要があります。

海と貝

次回は骨粗鬆症を予防するための方法をご紹介します!