有賀歯科医院 ニュースレター No.28

『免疫力を上げる①』

前回までは、徹底した歯磨き、歯のクリーニング、うがいなど、お口の中をきれいにすることが、カゼ、インフルエンザ、新型コロナウィルスの予防に多大な効果があるということをお話ししました。

病気全般に言えることですが、その他に食事、運動、睡眠、ストレスなどの食生活習慣も影響するということは言うまでもありません。

つまり病気にならないためには、正しい食生活習慣を続けるかどうか、それによってその人の「免疫力」をいかに上げるかどうかにかかっています。

感染症は、細菌やウイルスが体内に侵入することで成立するわけではありません。症状が出るか出ないかは、その病原体の感染力と、その人自身の抵抗力や免疫力のバランスで決まります。

新型コロナウイルスのケースでも、PCR検査をして陽性であったにもかかわらず、何の症状も出なかった人がいました。

症状がまったく出なかったり、軽症ですんでいるということは、ウイルスが鼻や口の中などの粘膜に付着しているだけで体に影響がない状態か、あるいはたとえ影響があっても「免疫力」によって炎症が軽度ですんだことを示します。

今回はこの「免疫力」をテーマに感染症予防対策についてお話ししていきたいと思います。

1.免疫とは?

「病気にならないためには、免疫が大切」といわれますが、そもそも免疫とは何でしょうか?
もともとの語源はラテン語で「疫(えき)病を免(まぬが)れる」という意味で、免疫という言葉が使われるようになりました。

ある種類の感染症では一度感染して治った人は二度とかからないということが「免疫ができた」という意味になります。

私たちの体が病原体に侵されないように常に警備し、必要に応じて戦う、この免疫システムがあるからこそ、私たち人間は生き延びてきたといえます。

2.ウイルスはどこから入ってくるのか?

私たちの体は皮膚や粘膜に覆われています。
皮膚からは傷でもない限り、ウイルスはほとんど入ってきません。

ですから、新型コロナウイルスの感染予防対策として、手洗いが推奨されていますが、手にウイルスがついただけでは感染しません。

その手についたウイルスが目や鼻・口の中の粘膜に移ることが問題なのです。

ただしウイルスがその粘膜に触れたからといって、必ずしも感染するわけではありません。

粘膜には、病原体を排除する様々な機能があるのです。

3.目や鼻・口の中の粘膜と粘液

粘膜と粘液目や鼻・口の中などの粘膜はウイルスや細菌に感染しやすいですが、粘膜を覆っている粘液に病原体を排除しようとする働きがあります。

たとえば、鼻や目に異物が入ったときには、鼻水や涙が出ます。

これは、鼻の粘膜や目の粘膜から分泌される粘液によって、鼻水・涙として異物を排除しているのです。

また、口の中は唾液の自浄作用やウイルス、細菌を中和する作用が働いてくれます。

このように粘液がしっかり分泌されれば、細菌やウイルスが侵入しても粘膜まで到達する前に粘液ごと排除してくれます。

さらに粘膜の排除を通り抜けた細菌やウイルスが粘膜の中に侵入しないように、目・鼻・口の中(歯肉、舌、上アゴ、頬や唇の内側、のどなど)の粘膜を丈夫にすることも重要です。

4.粘膜を丈夫にしてウイルスに勝つには?

粘膜を丈夫にして、粘膜の再生を促す栄養素には「ビタミンD」「ビタミンA」「亜鉛」などがあり、これらの栄養素を豊富に含んでいる食材あるいはサプリメントを摂取することが最も効果的です。

①ビタミンD

ビタミンDには「免疫力」を増強させ、がん、感染症、動脈硬化、心臓疾患、糖尿病、認知症、うつ病を予防する効果があります。

ビタミンDはマグロ、サバ、アンコウ、イワシ、サンマ、シラス、ヒラメ、タイ、タコ、カキ、ウナギなどに含まれています。

つまり魚をたくさん食べることでビタミンDが増えます。また、ビタミンDは食べ物から摂取するだけでなく、皮膚でも合成されます。

皮膚にあるコレステロールが太陽の紫外線を浴びることによってビタミンDに変わります。

紫外線の害を気にしている方もいるかもしれませんが、全く浴びないとビタミンD不足を招いてしまいます。せめて、一日15分ぐらいは太陽の光を浴びるようにしましょう!

ビタミンD多くある食品

最近ビタミンDが新型コロナウィルスに影響があるのではないかと言われています。
インドネシアで血中ビタミンD濃度と新型死亡者数と致死率のデータが公表されました。

血中ビタミンD濃度と新型死亡者数と致死率

つまり、ビタミンDを十分に摂取している人は、新型コロナウィルスに感染したとしても生存する確率が高くなるということです。
また、カルシウムをいくら摂っても、ビタミンDがないと小腸からカルシウムが吸収されないために強い骨を作ることができません。
その結果、歯や骨がもろくなりやすくなってしまいます。

②ビタミンA

ビタミンAが不足すると、ドライアイ、結膜炎、カゼなどになりやすく、皮膚が乾燥してカサカサになります。
ビタミンAは、ニンジン、ブロッコリー、オクラ、バター、卵、チーズ、レバー、ウナギなどに多く含まれています。

ビタミンAが多くある野菜

③亜鉛

亜鉛が不足すると、免疫力、抵抗力が低下して、傷が治りにくくなり、下痢、高血圧、リウマチ性関節症、胃潰瘍、骨粗鬆症、味覚障害、前立腺がん、糖尿病などになりやすくなります。

亜鉛は、カキ、赤身の肉、ラム肉、納豆、ほたて、ウナギ、レバーなどに多く含まれています。

以上の食べ物を摂取するとともに、サプリメントを活用することも一つの方法です。

粘膜を丈夫にすることは、花粉症やその他のアレルギーの予防にもなります。

細菌やウイルスを体の中に入れないように、ビタミンD、ビタミンA、亜鉛などを積極的に取り入れて、粘膜の免疫力を高めていきましょう。