春を迎え、すっかり暖かくなりましたね。新緑も美しい季節となりましたが、みなさんはいかがお過ごしでしょうか?
さて、有賀歯科医院に来院されているみなさんに少しでも健康に役立つ情報をお届けしようと始めたニュースレターですが、早くも第10号を発行することができました。
ニュースレターを通じて、より健康への関心が高まり、みなさんにとって良い刺激となれば嬉しいです。今後もスタッフ一同頑張って作っていきますので、是非楽しみにしていてください。
酸蝕歯って何?
私たちが日常的に食べ、飲んでいるものは、一昔前とはずいぶん変化しています。
自動販売機ではいつでも炭酸飲料が買え、おやつにはすっぱいグミや干し梅が大人気。食卓では、いまやレモンやポン酢、酢を使ったドレッシングが欠かせません。お酒は柑橘類を使ったカクテルが好まれ、さらには健康志向の高まりとともに黒酢や柑橘類を好む方も増えています。
その影響もあり、今 ”酸蝕歯” の予防が注目されています。
歯は酸に弱く、酸性度の強い(すっぱい)飲食物に長く触れるほど溶けてしまいます。
歯はカルシウムの一種でできていて、実は酸に触れると化学反応をおこして分解し溶けてしまいます。こうして病的に溶けてしまった歯を”酸蝕歯”と呼んでいます。
酸蝕歯になると、エナメル質が薄くなり、さらに溶けると象牙質がむき出しになります。歯がもろくなって欠けたり、歯がしみたり、ついには歯の内部にばい菌が入って神経に炎症が起きることもあります。
特に日常的に歯ぎしりや食いしばりがある方は、酸蝕症がより進行しやすいので適切な対策が必要です。
酸蝕歯の原因は生活習慣にある!
欧米では、かなり前から飲食による酸蝕歯の問題が広く認知されてきました。
というのも、欧米では朝食にオレンジジュースを飲み、サラダにドレッシング、グレープフルーツなどもよく食べます。
肉や魚にはレモンを添え、コーラやレモネードを受飲し、ワインやカクテルを飲むといった具合に、もともと酸性度の強い飲食物を日常的によく摂るからなのでしょう。一方、和食で酸性度の強い日常食といえば酢の物くらい。歯が強い酢に触れる機会は比較的少なかったのです。
しょうゆも味噌も酸性度は穏やか。そして、食後には1杯のお茶。こうした和食文化によって私たちの歯は守られてきましたが、欧米型の食生活が世代を超えて定着し、また、酸性度の強い炭酸飲料やスポーツドリンクなどの清涼飲料水がいつでも手に入るようになりました。
ペットボトルが普及してからは外出中も持ち歩きやすくなり、ちょこちょこ飲む方も多いのではないでしょうか?
それに加え、今や大人から子供まで酸っぱいものの魅力にとりつかれています。コンビニの入り口にはすっぱいお菓子がずらりと並び、食卓ではポン酢をかける機会が多く、お酒もチューハイが大人気です。酸性度の高い飲食物の消費にさらに拍車をかけているのが健康志向を背景とする習慣です。ビタミンC入りのドリンク剤や黒酢などです。これらの継続的な習慣こそ、酸蝕歯の最大のリスクとなっています。
食習慣の変化とともに、私たちの歯は”酸蝕歯”になりやすくなっています。いくら美味しく体に良くても、歯がぼろぼろになってしまっては、食べる楽しみも健康の喜びも十分に味わえません。
是非、生活習慣病としての”酸蝕歯”にも注意していきましょう!
酸蝕症を予防するにはどうしたらいいの?
美味しくて、健康にも美容にも欠かせないすっぱい飲食物。過剰な摂取は見直す必要がありますが、ちょっと工夫することで歯への影響を減らすことができます。
- すっぱいものを口にしたら、水やお茶を口に含むようにしましょう。
- ドリンク剤の代わりに、カプセル入りの黒酢やビタミンCを取り入れましょう。
- ストローを使って飲みましょう。酸が直接前歯に触れにくくなります。
- 酸蝕症の原因となるオレンジジュースや炭酸飲料、スポーツドリンクなどのちびちび飲みはやめましょう。豪快にぐっと飲み干すか、水やお茶を取り入れましょう。
- お酒はやわらかいおつまみと一緒に飲みましょう。噛むことで唾液がたっぷり出て、口の中が 中和しやすくなります。
- ブラッシングは優しく丁寧に行いましょう。酸蝕した歯を硬い歯ブラシでゴシゴシ磨くと、よけいに摩耗 してしまいます。
- 歯ぎしりや食いしばりのある方は、ナイトガード(マウスピース)を装着しましょう。
細菌の話2-お口の中の細菌はどこから来たのか?
私たちはお母さんのおなかの中(胎内)にいるときは、細菌にさらされていません(無菌状態)でした。ところが生まれた瞬間からすぐにいろんな細菌が口の中に住み着いてきます。
さらに歯が生えてくる頃からは、歯や歯の周囲にさまざまな種類の細菌が住み着きます。
その多くは、母親(保育者…場合によっては父親、祖父母)の口の中にいる細菌がうつることがわかってきました。
むし歯の代表的な病原菌であるミュータンス菌は、お母さんの口の中にたくさんいるほど子供にうつりやすくなります。
特に子供が1歳半から3歳の頃に母親(保育者)から感染することが明らかになっています。
例えば、赤ちゃんの食事でお箸やスプーンを共有したり、可愛さのあまり口付けしたりするなど、ごくありふれた日常のスキンシップの中で、唾液を介して感染する可能性があるのです。
母親(保育者)の口の中に多量のミュータンス菌がいて、さらに母親の砂糖摂取量が多ければ、子供のむし歯はさらに増えてしまうでしょう。
ですから、母親(保育者)のお口の中を清潔にして、正しい食生活を送ることによって、子供への感染率を下げることが可能なのです。
それでは歯周病の場合はどうでしょうか?
歯周病菌の親から子供への感染時期は、1歳から15歳と幅が広く、重度の歯周病は10歳頃にやはり大人から子供に感染します。
さらに歯周病菌は親子間のみならず、夫婦間での感染も認められることから、成人してからの感染もあるのです。
ご夫婦のどちらかが歯周病の場合は、ご夫婦そろって受診されたほうがいいかもしれませんね!
さらに年をとって元気がなくなると、待ってましたとばかり増えてくるのがカビの仲間であるカンジダ菌というものです。
口の中のカンジダ症は、やはり母親(保育者)からうつることが多いですが、外部からの感染もあります。カンジダ症になると、口内炎や口角炎ができやすくなります。
特に入れ歯を使っている患者さんは気をつけてください。
入れ歯にカンジダ菌が着くとヌルヌルします。
洗浄剤に入れるだけでは取れないため、入れ歯用のブラシも使ってきれいにしておきましょう!
【注】
この話を読んで、「自分がむし歯や歯周病なのは、親のせいだ!」とは決して思わないでください。あなたの親は、あなたの祖父母から菌がうつったのかもしれませんし、もっと前からそういう家系だったのかもしれません。
さらにはむし歯や歯周病の母子感染という話は、ごく最近になって言われてきたことで、誰もそんなことは知りませんでした。
一つだけ言えることは、あなたが子供のころ、親はあなたに大きな愛情を持って接していたということです。