有賀歯科医院は「歯の健康は全身の健康のもと」と考え、患者さんと長くお付き合いができる、親切で安心な歯科医療を目指しています。
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有賀歯科医院 ニュースレター №12

有賀歯科医院 ニュースレター No.12

くろうさぎ日ごとに寒さが加わる今日この頃ですが、いかがお過ごしでしょうか。

有賀歯科医院に来院されているみなさんに、ニュースレターを通じてより健康への関心が高まり、良い刺激となれば嬉しいかぎりです。今後も頑張って作っていきますので、是非楽しみにしていてください。

熱心に歯のケアをしているのに、歯が欠ける、折れる、割れる、かぶせものが壊れるなどのトラブルが何度も起きてしまう方が増えています。

時間をかけてしっかりと治療を受け、定期的なメインテナンスを受けている方が多い有賀歯科医院の患者さんの中にも、そのようなお悩みを抱えている方は少なくありません。

今回のテーマはこのようなトラブルの原因の一つとして考えられる、歯ぎしり・くいしばり(ブラキシズム)です。

ブラキシズムとは

ブラキシズムとは、

・「歯ぎしり」(キリキリと音を立てるもの)
・「くいしばり、噛みしめ」  (音を立てずに強く歯を噛みしめること)

これらを合わせた過剰な力の総称です。

ブラキシズムによって耐久性を越えた過剰な力が習慣的に加わると、歯や骨を支えている組織、顎関節や筋肉に負担がかかってしまい、重大なトラブルが起きやすくなってしまいます。

起きている時に行う「噛みしめ」のくせを覚醒時ブラキシズム睡眠中に無意識で行う歯ぎしりや噛みしめ睡眠時ブラキシズムと呼びます。
睡眠時ブラキシズムは力の制御が難しく、通常の噛む力(体重と同じくらい)よりさらに大きな力が加わります。強い方では70kgにもなると言われています。
さらに、音を立てない噛みしめの場合は、ご家族でさえも気付きにくいので注意が必要です。

ブラキシズムのチェック

□歯がすり減り光沢がある

奥歯のかみ合わせ面の溝や前歯の先が、すり減ってツヤツヤしていませんか?
強い力で繰り返し歯ぎしりすると、歯が摩耗してしまいます。外側の硬いエナメル質が摩耗して内側の軟らかい象牙質がむき出しになっていきます。

前歯の切端の摩耗奥歯の咬む面の摩耗

□歯が欠けやすい・折れやすい

歯ぎしりや噛みしめの強い力が繰り返しかかると、力の集中しやすい歯の根元のエナメル質がだんだんとはじけとんで(チップして)
くさび状に切り込むように失われてしまいます。
さらに進むと歯が折れる原因になります。
歯が折れてしまうと、抜歯せざるを得ないことがほとんどです。

歯の根元の くさび状欠損

□治療したあとの被せもの等が壊れやすい雪うさぎ

被せものの耐久性を越える力が繰り返しかかると、壊れやすくなります。
セラミックのように耐久性が高い材質も、ブラキシズムのために欠けてしまうことがあります。
ブラキシズムによってかかる力は大変強く、インプラントですらまれに折れてしまうことがあるほどです。

□朝起きるとあごが疲れている

ブラキシズム中は、あごを動かす筋肉がギュッと収縮します。強い収縮が持続しておこるので、筋肉が疲れて違和感や痛みが出てしまいます。睡眠時ブラキシズムによる筋疲労の特徴は、朝起きたときに違和感や痛みが最も強く、時間がたつにつれて消えていく一過性であることです。
顎関節症の原因のひとつとしても考えられています。

□舌や頬に圧痕がある

舌の側面や頬(ほっぺた)の内側に、歯で押しつけた痕がある方は、睡眠時ブラキシズムや日中の噛みしめグセで筋肉が緊張して、歯で押しつけられていることを示しています。
あなたのお口の中には、こんな痕がありませんか?

頬粘膜への歯の押しつけ痕舌への歯の押しつけ跡

□骨隆起がある

就寝中に歯ぎしりや噛みしめをしたり、日中に噛みしめるクセがあると、顎の骨が変形して盛り上がってくることがあります。
(骨隆起自体には問題はありません)

下顎にできた骨隆起

歯周病との関係

歯周病は、歯周病菌に感染することによる炎症で歯を支えている組織が破壊される病気です。

ブラキシズムは歯周病に感染していないお口にも歯周病と似た状態を作り出します。

過剰な力が加わり歯や歯の周囲の組織が持続的に圧迫されることによって、歯を支えている骨などがいたみ、溶けていくのです。
歯と歯の間の隙間が広がったり、噛み合わせが変わって噛みにくくなるといった問題が起きやすくなります。

さらに問題なのは歯周病に感染している方のブラキシズムの被害です

感染+過剰な力という要因で症状が悪化しやすくなり、また歯周病の治療をして炎症がなくなっても、回復が遅くなったり再発しやすくなったりします。

ブラキシズムへの対策

ブラキシズムの原因はストレスであるとよく言われますが、くわしく調べると、ストレスが強い方の歯ぎしりが必ずしも強いとは言えず、相関関係は一部にしかあてはまらないと考えられています。
しかし睡眠時ブラキシズムの大半が浅いノンレム睡眠時(比較的深い眠りで、筋肉は動いているが脳は休んでいる状態)の時に集中して起こることは明らかになっています。
深い眠りの時に起こる睡眠時ブラキシズムはコントロールが難しく、それ自体を止める有効な方法はまだ見つかっていません。

マウスピース(ナイトガード)

睡眠の質を良くするための行動療法として、

・いびきを治す
・タバコをやめる
・寝酒・深酒をやめる
・なるべくストレスを減らす

マウスピースこれと同時にマウスピースを使用することで、強い力を歯列全体に分散させて負担を減らすことが有効とされています。

最も重要なことは患者さんがブラキシズムの症状に気付き、過剰な力がもたらす問題に目を向けていただくことです。睡眠時にブラシズムを行っていないかチェックし、気になるときはお気軽にご相談ください。

本当は怖いんだって、知覚過敏は

本当は怖い!知覚過敏

「ためしてガッテン」で紹介された「本当は怖い!知覚過敏」を見た歯医者さんたちの意見が分かれています。

2010年9月22日放送の「ためしてガッテン」(NHK)で、「歯がしみる、割れる 本当は怖い!知覚過敏」というテーマで、「知覚過敏の原因その2・くさび状欠損」という興味深い内容が放送されていました。番組では、歯の根元がえぐれてしまう「くさび状欠損」(WSD:Wedge-shaped defect)の原因を、歯のくいしばりによって歯の根元に「ひずみ」が生じ、エナメル小柱という歯のカルシウムの結晶にキズができるためと説明しています。

歯磨きのしすぎ?

この説明自体は既に歯科医師の間では常識となっていますが、15年ほど前までは「くさび状欠損の原因は歯磨きのし過ぎ」が原因と考えられていたため、一部の歯科医師の間では、番組で言われている「歯ブラシのし過ぎではなく、キズによって起きるという見解には何か作為的なものを感じる」という意見が出ているそうです。

一方では、「抜けた歯に歯磨き粉を塗りながら何十万回も歯ブラシを行う実験を行っても、くさび状欠損は発生しなかった」という意見もあり、まだ諸説が入り乱れているようです。

ではインターネット上の見解はどうなっているか、いつものように調べてみます。

ウィキペディアにて

まずは定番のウィキペディアで「くさび状欠損」を調べてみると、残念ながら「このウィキでページ「くさび状欠損」を新規作成する」という結果で、まだ情報がありませんでした。こういう場合は、ちょっと手の込んで検索方法になりますが、YahooGoogleで「楔状欠損 原因 site:ac.jp」という方法で検索を行います。この「site:ac.jp」というのは、大学の公式ホームページだけを検索する方法ですが、結果的にはネット上の情報を見る限り、「原因が歯ブラシによる」という報告は殆どなく、「楔状欠損の原因はくいしばり」に軍配があがったようです。

歯に負担がかかることは要注意!

さらに番組では、「歯に力がかかる人、スポーツ選手、歯ぎしりをする人」などは要注意で、「気付かないでいると歯が割れたりひびが入る危険性もある」と指摘しています。実際、私の友人はゴルフで二回も大臼歯を割っていますし、虫歯がなくてもヒビが原因で歯がしみることは良くあります。

しみる原因は虫歯ではないことも

これも歯科医師の間では常識となっていますが、実はなかなか患者さんへの説明が難しく、こういう番組で取り上げてもらえると実に説明が楽になります。いっそのこと、本当に「歯が割れた」状態であれば説明もいらないのですが、「歯がしみるのは虫歯」と思い込んでいる患者さんは多く、「虫歯はないようなので、ヒビが入っているかもしれません」と言っても、なかなか納得しない患者さんがいるのも事実です。

さらに番組では、もっとおもしろい(失礼)ことを言っていました。

食後すぐに歯をみがかない

「正しい歯みがき」のコツは「食後すぐに歯をみがかない」こと、だそうです。

「えっ」と思われた方、多いですよね。では次回はこの「歯磨きの常識と非常識」についてご説明いたします。

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