歯のクリーニング

1.歯のクリーニングとは

歯についた歯垢(プラーク)、歯石、着色を特殊な器具を用いて除去します。

歯磨きだけではどうしても取れないよごれやバイ菌のかたまりを除去するので、むし歯や歯周病・口臭の予防にもなります。

もちろん歯のクリーニング→トリートメントした後は口の中がさっぱりしてツルツルになり、気分も爽快です。

2.よくあるご質問

1) 歯のクリーニングをすると、なぜむし歯や歯周病になりにくくなるのですか?

むし歯や歯周病は細菌が原因となって引き起こされる病気です。

歯垢(プラーク)中には様々な種類の多くの生きた細菌が含まれていて、バイオフィルムというバリアを作ってどんどん増殖していきます。

放置すると厚みを増して、細菌が作り出す酸によって歯の成分が溶け出してむし歯になったり、歯周病菌がどんどん増えてきます。

歯のクリーニング

クリーニングによってバイオフィルムを破壊することで細菌の数を減らすと、お口の中がむし歯や歯周病になりにくい環境になり、さらに適切なブラッシングを続けることで細菌が増えにくくなります。

2) クリーニングすると、どうして歯がつるつるになって白光りするのですか?

クリーニングで歯石などの固い沈着物はもちろん、細菌のバリアであるネバネバしたバイオフィルムも取り除くことができます。着色も取り除くので、黒色や褐色などの汚れもなくなります。

これによって、歯の表面がつるつるになり、本来のエナメル質の白さが戻るのです。

3) 特に歯が着色しやすい人の特徴は?

・紅茶、コーヒー、ワインなどの飲食物をよくとる人
・たばこを吸う人
・歯並びが良くなく、歯磨きが行き届かない部分がある人
・食事のとき、あまりよく咬まないで飲み込んでしまう人

4) 歯の着色を残しておくと、どういう弊害がありますか?

フロス歯の着色は色の濃い食べ物や飲み物、一部の薬品などの色素が歯に付着したものです。

これ自体には歯垢のような害はありませんが、色素の表面のざらつきに歯垢が付きやすく、むし歯や歯周病になりやすい環境を作ってしまうおそれがあります。

また、着色部分にもバイ菌は存在しています。

5) 毎日、ブラッシング(歯磨き)だけしていればクリーニングは不要ではないですか?

歯に付着している細菌とそのバリアであるバイオフィルムは、ブラッシングで取り除くことができます。

また、お口の中に浮遊している細菌を取り除くためにも、ブラッシングは大変重要です。 

しかし、細菌が歯の表面に作り出している歯垢の中には様々な種類の細菌が存在していて、厚くなるまで成熟した歯垢はとても強く歯に付着しており、ブラッシングだけでは十分に取り除くことが難しいのです。 

また、歯と歯の間や歯が重なっているところなど、ご自分ではどうしても歯ブラシが届きにくい部分があり、厚い歯垢が付着している場合が多いため、それを取り除くためにクリーニングが必要となるのです。

6) 歯だけでなく入れ歯もクリーニングしなければならないのはなぜですか?

入れ歯にも歯と同じようにカンジダ菌などの細菌が付着します。クリーニングの際はできれば歯垢染色剤を使って歯垢が付着していないか確認し、清掃する必要があります。

 

歯垢染色剤で染めてみると

口腔カンジダ症は、お口の中の常在微生物であるカンジダ菌が、免疫が低下した方のお口の中で増殖して痛みなどを引き起こすものです。健康な方でも、義歯を装着している場合、義歯の表面にこのカンジダ菌が多く付着しているため、しっかりと清掃する必要があります。

義歯の清掃:義歯は複雑な形をしているため、ブラシなどで細かい部分までしっかりと清掃します。

義歯の清掃

7) 健康な歯だけではなく、詰め物やかぶせ物をしたところもクリーニングする必要があるのですか?

むし歯の再発は、詰め物やかぶせ物と歯との間に汚れや細菌がたまることによって起こります。

その間の隙間はセメントなどで封鎖されていますが、周りに歯垢が付着して歯の表面が溶けてきたりすると、隙間からセメントが溶け出して新たなむし歯の原因となります。

一度むし歯になったところは、磨きにくかったり、歯垢が付着しやすかったりする場所であることが多く、治療して詰め物やかぶせ物をしたあとも注意が必要です。

lineの部分はむし歯が再発しやすい場所です(かぶせ物と歯肉の境目)

むし歯が再発しやすい場所

8) ぐらついている歯でもクリーニングできますか?

歯にできるだけ余分な力をかけないように細心の注意を払って、適切な器具を使ってクリーニングすることができます。

ぐらついている歯の表面や歯肉の周囲には細菌が多く存在していることが考えられますので、十分にクリーニングすることが必要です。

ぐらついている歯のクリーニング

9) 歯のクリーニングだけで歯周病は治りますか?

歯についている歯垢や歯石を除去しますので、軽度の歯周病であれば、歯肉の腫れ、出血がおさまり治ってきます。ただ中程度~重度の歯周病の方はクリーニングをした後に本格的な歯周病治療が必要となります。

10) 今まで定期的にクリーニングしてきたのに、すぐにまたむし歯になってしまうのはどうしてでしょうか?

クリーニングをすると、直後はお口の中の細菌が少なくなりますが、また増殖してきます。適切なブラッシングを行って、毎日の歯磨きで良い状態を保つことが大切です。歯垢の付きやすい部分を知って、どのような道具を使って取り除いたら良いのか、適切な方法を身につけることでクリーニングの効果が高まります。 

ブラッシング指導

歯磨きの技術だけでなく、回数やいつブラッシングするかどうかも影響しますし、食事や間食のとり方や内容、生活習慣の改善が必要なこともあります。  

ドライマウス(唾液の分泌量が減り、お口の中の粘膜や舌、唇などが乾燥する状態)の症状がある場合、唾液の働きが弱まってむし歯や歯周病になりやすくなると言われています。唾液には細菌などを洗い流す働きの他、細菌やウィルスを中和する作用があるので、減少すると細菌にとって活動しやすい環境になってしまいます。

特に、歯肉が下がって歯の根元が露出している部分がむし歯になりやすく、十分注意が必要です。

11) 歯のクリーニングをすれば口臭は消えますか?

口臭にはお口の中の成分由来のものと、呼吸器(鼻、肺、気管支など)や消化器(胃・肝臓など)由来のものとがあります。 

お口の中の歯垢などが原因で起こっている場合は、クリーニングをして原因を取り除き、適切なブラッシングを続けることで軽減することが多いです。 

当院で使用している口臭測定器では、口臭の原因がお口の中にあるのか、鼻や副鼻腔にあるのかを判別することができます。

検査の結果、呼吸器や消化器が原因と思われる場合は、専門医に相談していただくことをおすすめしています。 

12) 歯のクリーニングだけでは歯は白くならないのでしょうか?もっと白くする方法はないですか?

クリーニングでは歯の表面に付着している汚れや細菌などを取り除くことを目的としていますので、現在の歯本来の色に戻すことはできますが、それ以上に白くすることはできません。 

歯のホワイトニングを行うことで、歯の色を白くすることができます。

専用のトレーを作り、ホワイトニング剤を入れて一定時間装着することで、白く明るい色になっていきます。

ホワイトニング前にクリーニングを行って歯に付着物などが残っていない状態にすることで、より効果を発揮します。ホワイトニングの効果は、使用をやめると徐々に元の色に戻っていきますが、ホワイトニング剤を再び使用することで白くすることができます。 

13)歯のクリーニングをすると、なぜ風邪・インフルエンザ・肺炎の予防になるのでしょうか?

お口の中にはたくさんの細菌が存在していますが、免疫力が保たれている場合は病気にならずに過ごすことができます。

歯垢(プラーク)が多いと、細菌の出す酵素によってのどの粘膜を守っているタンパク質がこわされ、のどにウィルスがくっつきやすくなり、風邪やインフルエンザにかかりやすくなります。 

また、加齢により嚥下反射が低下した方は、お口の中の細菌が気道に入ってしまうことで肺炎を起こすことがあります。だから、クリーニングや毎日のプラークコントロールで細菌数を減らしておくことがとても大切です。 

14) 病院で手術したり、長期入院する前に、必ず徹底的なクリーニングをしておかなければならない理由は?

お口の中の細菌は、お体の抵抗力が低下すると増殖します。また、手術前後の状況や入院生活の環境によっては、歯磨きがいつもどおりに十分にできないか、しばらくの間全くできない状態になることも考えられます。

むし歯や歯周病にならないようにするために、事前にクリーニングを行い、お口の中の細菌をできるだけ少なくしておく必要があります。 

さらに、お口の中の細菌が血管を通って、脳、心臓、肺、腎臓、肝臓などの臓器に行かないようにしておけば、感染のリスクが減り、手術の経過も良くなります。 

15) 歯のクリーニングはどのくらいの間隔ですればよいでしょうか?

理想的には3ヶ月に1回がよいでしょう。少なくとも半年に1回はしたいところです。ただし歯周病の患者さんは3ヶ月に1回はしないと非常に心配です。当院の患者さんの中には毎月いらしている方もいます。 

クリーニングをしてお口の中の細菌を減らしても、細菌は再び増殖します。

クリーニングをした直後はきれいな状態でも、日々の飲食や歯磨きのくせなどによってだんだんと以前の状態に戻り、むし歯や歯周病になりやすくなってしまいます。 

研究の結果、約3ヶ月ごとの定期的なクリーニングを受けることで、プラークコントロールの良好な状態が保たれることがわかっています。

お口の清掃度