有賀歯科医院 ニュースレター No.20

季節のご挨拶

日ましに秋の深まりを感じる頃となりましたが、いかがお過ごしでしょうか。
有賀歯科医院に来院されているみなさんに、ニュースレターを通じてより健康への関心が高まり、良い刺激となれば嬉しいかぎりです。
今後も頑張って作っていきますので、是非楽しみにしていてください。

ニュースレターNo.19では、誤嚥性肺炎が起こるしくみと予防法についてご紹介しました。
誤嚥性肺炎とは、食べ物やお口の中の細菌が誤って肺に入ることにより、引き起こされる肺炎です。
特にご高齢の方や入院中の方に起こりやすいと言われており、昨今国民の関心が非常に高まっています。

誤嚥性肺炎の方の肺から、お口の中にいる細菌が見つかることが多く、適切な口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防につながることがわかっています。
今回はお口の中の細菌や誤嚥性肺炎について、さらに詳しくお話ししていきたいと思います。

お口の中の細菌

一体、お口の中のどこに細菌はいるのでしょうか?
歯だけではありません。
歯肉、歯周ポケット(歯と歯ぐきの隙間)、舌、頬の内側の粘膜、上あごの粘膜、のどの粘膜、唾液、そして入れ歯などに、驚くほど多数の細菌が存在しているのです。

お口の中の細菌数

あなたのお口の中はいかがでしょうか?どのくらいの数の細菌がいるでしょうか?

また就寝中は唾液の分泌がほぼ止まり、唾液で細菌を洗い流したり、中和する作用が働かなくなります。 
このため、細菌は一晩で1000倍ほどに増殖してしまいます。

↑夜寝る前のブラッシングがとても重要な理由です。

また、お口の中には約700種類もの菌がいます。
最も多く存在するのが、虫歯の原因菌であるミュータンス菌などのレンサ球菌です。
その他、酸を産生するラクトバチリス菌、歯周病に関係の深い桿菌やスピロヘータ、カビの一種であるカンジタ菌などもいます。

これらの細菌は、普段は体とバランスを保って存在していますが、免疫力が低下したりすると増殖して、むし歯や歯周病その他の病気の原因となることがあります。
誤嚥性肺炎の患者さんの肺から、上記のレンサ菌球菌や、カンジタ菌などが見つかることが多く、口腔ケア(適切なブラッシングや定期的なクリーニング)がいかに大切か!ご理解頂けると思います。

口腔ケア(適切なブラッシングや定期的なクリーニング)

誤嚥性肺炎の症状

肺炎は普通、発熱やせきたんなどの症状がありますが、厄介なことに誤嚥性肺炎においては、初期段階ではわかりやすい症状が見られないことが多いので、気付いた時には手遅れというケースも多々あります。

・喉が常にゴロゴロ鳴っている
・食事中に頻繁にせき込む
・唾液がうまく飲み込めない
・原因がはっきりしない発熱や倦怠感がある

誤嚥性肺炎の症状

といった症状が長く続く場合は、誤嚥性肺炎を疑った方がいいかもしれません。
さらに、脳梗塞などを経験したり、寝たきりの方、睡眠薬を常用していたり、歯周病やむし歯のある方は要注意です。

誤嚥性肺炎の治療

誤嚥性肺炎は、いったん発症すると、自然治癒することはないので、専門的な治療が必要になります。
呼吸器内科というところで、胸部レントゲン検査などをした後、抗生物質による薬物療法が必要となります。
しかし、治療後にきちんと食べ物を飲み込めるよう、リハビリもしっかりとしてくれる誤嚥性肺炎に強い病院はまだ少ないのが現状です。

誤嚥性肺炎の予防

65歳を過ぎれば5年に一度、肺炎のワクチン接種がありますので、もう受けられた方もいるかもしれません。
でも誤嚥性肺炎は、口の中に常在する複数の細菌の混合感染であるため、残念ながら予防ワクチンはありません。
ですから自分で意識して予防していかなければなりません。

前回のニュースレターでも述べましたが、誤嚥性肺炎の予防法について以下くわしく述べていきます。

1.意識的にせきをする。意識的につばを飲み込む。

人間は1日に約500回つばを飲み込むと言われていますが、これは多ければ多いほど良いです。
特に食事の前には、唾液を5,6回飲み込んでから食べると、むせにくくなります。

2.口腔ケアをしっかりする

歯だけなく、舌や上あご、頬の内側なども磨きましょう。
さらに入れ歯には、誤嚥性肺炎の原因となるカンジタ菌が付着しやすいので、入れ歯を触ってヌルヌルしていたら要注意です!
ブラシや入れ歯洗浄剤を使って、徹底的に除菌してください。

口腔ケアをしっかりする

定期検診のときは、私たちがさらにお口の中や入れ歯の菌を減らします。

3.「ブクブクうがい」と「ガラガラうがい」

うがいでお口の中をきれいにして、さらにのどの筋力もつけて、食べ物をきちんと飲み込めるようにしましょう。

うがいでお口の中をきれいに

4.誤嚥しやすい食べ物に気をつけましょう!

・もちやかまぼこ、こんにゃくなどの弾性があるもの
・ゆで卵や焼きイモなどの水分の少ないもの
・すっぱい食べ物

 

これらは誤嚥しやすい食べ物なので、なるべく食べるのを控えたり、調理方法を工夫して食べるようにしましょう。
(例:ゆで卵を半熟にする。もちや焼きイモは小さくして食べる)

これは最近増えている「窒息」の予防にもなります。

5.ながら食事はやめましょう!

テレビを見ながらとか、新聞を読みながら、あるいはスマホをいじりながらなど、”ながらの食事”は誤嚥する
可能性があります。
食事の時は食べることに集中するように心がけましょう。

6.早食いはほどほどに!

現代社会で何かとせわしく、食べる時間も十分にとれないときもあるかもしれません。
でも若いときから早食いの習慣がついてしまうと、よく噛まないで飲み込みますから、むせたり、せきこんだり
して、食べ物や細菌を肺に入れてしまう回数が増えてしまいます。
しかも、だいたい早食いの方は歯磨きをする時間も短い傾向があります。
若いときからできるだけ時間をよくとって、よく噛んで食べるようにしましょう。

「食べ物をよく噛んで、口腔ケアをきちんとする!」これが誤嚥性肺炎の最大の予防用です。

あなた自身の健康のためです。
是非普段から心がけて、健康を維持していきましょう!

食べ物をよく噛んで、口腔ケアをきちんとする!